名古屋高等裁判所 昭和46年(ネ)314号 判決 1971年11月25日
主文
本件控訴を棄却する。
控訴費用は控訴人らの負担とする。
事実
控訴人らは、原判決を取消す、被控訴人らの請求を棄却する。訴訟費用は第一、二審とも被控訴人らの負担とする、との判決を求め、被控訴人らは主文同旨の判決を求めた。
当事者双方の主張、証拠関係は被控訴人らが甲四号証、同七号証の一、二を提出し控訴人らが右甲号各証の成立を認めたほかは原判決事実摘示のとおりであるからそれをここに引用する。
理由
本件に対する原判決の事実認定は原判決掲記の証拠に当審で提出された成立に争いない甲七号証の一、二を加えて当裁判所が行つた事実認定と一致するので原判決の理由のうち事実認定に関する部分即ち原判決の理由第一項(一)(二)(三)をここに引用し次のとおり判断を示す。
本件は宮川敏子の小林幸子に対する強制競売申立に基づく手続が進行し、被控訴人五味卓治がこれを競落して所有権を取得した後一部を残しそれを更に他の被控訴人らに持分譲渡が行われたものであるところ、小林幸子を所有者とする登記名義が同人と控訴人広川良平との通謀虚偽表示によるもので無効だという判決があつたため広川へ回復登記が許された案件である、そして一番基本の小林幸子の登記名義が虚偽であればその後の各譲渡行為も無効となり、かつ、被控訴人らは小林幸子の特定承継人になるという解釈のもとに名古屋地方裁判所が承継執行文を発し、法務局も亦控訴人広川良平への回復登記を許したもので単純形式的には右裁判所や法務局の措置は小林幸子に対する確定判決がある以上やむを得なかつたものと解される。然し、広川は本来原判決理由二(一)(二)記載の理由により名古屋地裁昭和四二年(ワ)第二二〇六号事件の確定判決に承継執行文を得て強制執行をなすことができなかつたものといわなければならない。当審ならびに原審に現われた全証拠によるも右判断を左右することができない。
そうすると控訴人広川良平が本件各土地について右判決にもとづいて経由した各登記はいずれも無効であり、右の登記を前提とする控訴人小林龍夫同小林一夫の各登記も亦無効であるといわねばならない。
されば被控訴人らの本訴請求を認容した原判決は正当であつて本件控訴は理由がないから棄却し民事訴訟法第三八四条第八九条第九五条を適用し主文のとおり判決する。